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アルファとココネが拳銃を持っていることは、この世界の負の部分を表す要素として、よく引き合いに出されます。 では、本当に拳銃が必要なほど、この世界の治安は悪いのでしょうか？ ＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊ ココネが本当に拳銃を必要としているらしいことは、ムサシノ運送が社員に拳銃の訓練を施し、しかも実際に発砲できるよう、電気弾を装填していることからも推測できます（相手を殺傷する通常弾を装填していると、社員が発砲をためらう可能性があります）。 またアルファが拳銃を持っていることに、「おっさん」はやや驚いてみせたものの、何の疑問も見せていません。やはり女性一人で店を経営するということは、それなりの危険があるということでしょうか。 各地を旅しているアヤセやその友人は、銃を持っている様子がない（少なくともすぐに取り出せる場所に装備していない）ことを見ると、治安は悪くないと見る向きもあります。 が、コトはそう簡単ではありません。第０話で登場する雑貨屋に、ライフルやマシンガンと思われる銃が売っているところを見ると、山賊をしようとする連中がかなり重装備をしている可能性があります。とすると、下手に武装するより、無抵抗で持ち物をすべて差し出したほうがいい場合があります……だいたい、盗られるったって、大した持ち合わせもないでしょうし、無一文になっても彼らなら道端の草食って生きていけそう。 また、第０話では、アルファの後ろ腰にはきちんと、「鉄砲用に作った革のバッグ」を身につけています。ここに鉄砲が入っていることは想像に難くありません。 さらに、「午前２／２」では、ココネの鳴らした呼び鈴に対応するため、アルファは鉄砲をパンツの後ろに挟んで玄関に出て行っています。この様子はコミックにちらりと出てきますが、ＯＶＡのほうがはっきりと表現されています。やはり、普通なら人の来ない母屋にやってくるというのは、アルファにとっても不安なことなのでしょうか。 どうでもいいですが、犯罪者と遭遇する可能性のある状況下で、弾丸を装填していない銃を持つのは逆に危険では……。 そうそう、このアルファ、拳銃を左手で扱ってません？ ちなみにアルファがきちんと右利きなのは確認済み（箸もペンキのハケも鉛筆も右手で持ってます）。ついでに言うと、この銃を左手で発砲すると、イジェクトされた薬莢が顔面を直撃します。 ＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊ しかし逆に、治安が悪くない可能性を示すシーンもあります。 60話でココネは、後ろから丸子におどかされ、慌てて銃を抜いていますが、相手を死傷させる心配がないとわかっていて引き金を引きませんでした。アメリカあたりで銃の扱いに慣れた人なら、迷わず発砲している状況です。 これには二つの解釈があり得ます。ココネには、相手が誰であるかを判別する時間があった（つまり、ココネの早抜きはその程度）ということと、彼女は発砲すべき場面で発砲できなかったことです。 前者の場合、ムサシノ運送には実は、たいして危機意識がない、ということでしょう。 後者だった場合、私は、ココネが実際に銃を抜いたことがほとんど無い（あるいは全くない）のではないかと思っています。またココネ自身、本当に発砲するような場面があるとは思っていないのではないでしょうか？ だいたい、後ろ腰という、抜き撃ちに向かない場所に銃を持って、しかも３発しか装填されていないわけですから、想定している危険もたかが知れているという話もあります。 さらに、８巻を通じてよく見てみると、旅の間、アルファは銃を見えるところに持っていません。彼女が「宝物」である銃を置いてくるとはちょっと考えられないので、きっとあのバックパックに入っているのでしょう。 しかも彼女は、第64話で旅に出る時点からこの状態です（つまり、銃が不要であるのが最初からわかっていたのです）。 さらに言えば、９巻を通じて見ると、鉄砲が全く登場していません（７巻以前には、机の上に鉄砲を出していたことを思い出してください）。このことは何か意味があるのでしょうか？ どちらにしても、ムサシノ運送の方針は案外、危険に対して過敏に反応しているだけなのかもしれません。 もちろん、ムサシノ運送の社員には別の危険もあります。彼女らが身につけている制服は、見知らぬ地域で自分の身元を明らかにして、信用を得る役に立つでしょうが、同時に自分が他所者であることをアピールする結果になります。 通信手段の限られた世界で、真っ先に犯罪の被害者になるのが旅人であるのは、言うまでもありません。 しかし……どうでもいいですけど、この世界の宅配の料金、ものすごい高そう。ココネがアルファにカメラを送るのも一日がかりだしね〜。 ＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊ だいたいですねぇ、この世界、どうも土地も食べ物も豊富にありそうですし、案外みんな、必要なものは充分に持ってるんじゃないですか？ で、自分が持っていないものは他人も持ってない、って感じ。誰かから何かを奪おうにも、肝心の奪うべきモノがどこにもなかったりして……。 そりゃ、不労所得で生きてこう、なんていう不届きモノはどの時代にもいるだろうけど、やむを得ず犯罪に走る人って、すごく少なそうな気も。 ＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊ ところでアルファは、護身用にと渡された銃に、弾丸を装填していません。この意味も考えてみる必要がありそうです。 もちろん、そもそも銃が必要ではない、という可能性もあります。しかし、それでは初瀬野氏がなぜ、アルファにわざわざ銃を送ったのか、説明する必要があります。 逆に、実際には銃があったほうがいいのに、アルファが敢えて弾を込めていない可能性があります。こうなると、アルファの心情も考えてみる必要があるでしょう。 前者の場合、初瀬野氏の度を過ぎた愛情が伺われます。なんとしてもアルファを失いたくない、という気持ちが、必要もない銃を持たせるという、過剰な行為となって現れた、というわけです。アルファはこれを、オーナーの心配性を笑ったのか、氏の感情に反発を感じたかはわかりませんが……。 逆に後者の場合、アルファにとって銃を送られることは、自分の身を自分で守ることを要求されている、逆に言うと「私はあなたを守ることができない」と宣言されたわけで、ある意味ではショックだったのかもしれません。 これを自分の成長の一過程としてきちんと受け入れたのであれば、わざわざ弾を込めずにいることがどうも説明できない気がします。アルファが弾を込めていないのは、心の底で、オーナーの意志に何らかの反抗をしているのかもしれません。 ＊＊＊ ＊＊＊ ＊＊＊ えっと、最後はあんまり関係ない話になってしまいましたが、やっぱり、治安はそんなに悪くはない気がします。もちろん、岬の突端である三浦地域の治安とよそとを比較するのは危険でしょうが、ま、こんなもんじゃないでしょうか。 |