先日初めて、ネットショッピングで本を購入した。 　もう数年来、あらゆる本屋や古本屋を探し歩いてきた本だ。正直、そろそろ本屋に取り寄せを頼むべきか、本気で悩み始めた本だった。 　私は実は、通販はあまり好きではない。今でも買い物というのは、自分で店を歩き回り、商品を手にとって吟味し、わからないことは店員に聞きながらするものだと思っている。 　時代錯誤かもしれないが、正直、それが楽しいのだ。 　同じような理由で、取り寄せというのも好きではない。商品を見ないうちに取引が決まってしまうというのも、なにか抵抗を感じる。 　もっとも、車趣味などやっているとそればかりというわけには行かなくなる。とくに弾数の少ない古い車に乗っていると、パーツはだいたい取り寄せになる。このあたりは諦めるしかないところが、少し残念ではある。 　どちらにしても私は、本というと、一部の例外を除いて、時間をかけて自分の足で探してきた。そのために遠くに行くことも厭わなかったし、旅行中にわざわざ本屋に立ち寄るなんてこともしてきた。 　しかし今回の本は、それでも見つけられなかった。正直、絶版が近いのではと言われてきた本だけに、少なからず焦りがあった。 　今までは、それで諦めてきた本が何冊もあった。それらの本は、頭の中にいつも入れておき、本屋に行ったときに思い出したように探す、そんなことをしてきた。しかし今回はそうも行かないほど、その本が欲しかった。 　そして、ついに重い腰を上げて(？)ネットショッピングとなったわけだ。 　注文は本当に簡単だった。キーワードで本は一発で出てきたし、住所と名前を入力すればほぼ終わりだった。 　受け取りを近所のコンビニエンスストアにすると、普段は家を空けている私でも、宅配の不在票の心配無しに気軽に受け取ることが出来る。 　注文から４日目に届いた本は、買い物ついでにレジで注文票を渡すとあっさりと受け取ることが出来た。 　これまでの苦労を考えると、本当に拍子抜けすると言ってよいくらいの簡単さだった。 　本当に便利な世の中になったと思う。 　考えてみたら私は、普段からいつもネットの恩恵を受けている。ちょっとした調べものは Yahoo に google ですぐに終わる。旅行の前のホテルや駐車場などの情報収集にはネットは欠かせないし、いろいろな人との情報交換で、以前なら考えられないほどの知識を得ることが出来る。 　それを、今度の本で実感した。 　ネットだけではない。コンビニエンスストアにしても何にしても、本当に便利なものが増えている。 　別に、不便なほうがいいとか、そんなことを言うつもりはない。 　苦労を楽しむことは知ってはいるが、最近流行のスローライフというのも、私は横目で見ているだけだ。 　便利なほうがいいに決まっている。まず便利があれば、人はそこからいろいろなものを選択していける。不便で苦労するほうを選ぶのも自由だし、たくさんの人がそれを望めば、世の中はそういう流れになるだろう。だから、便利なものはどんどん発明されていいと思う。 　しかし、こうして便利にあふれた世に住んでいると、何か不思議な感覚にとらわれるのも確かだ。 　それが何であるのか、私にはちょっとわからないのだが……。 　そして、あと10年も経てば、今からは想像も出来ないほど便利な世の中になっているのだと思う。 　その想像は、どこかワクワクもするし、何か不安でもある。

最近の本屋事情
　……　便利な世の中になったと思う